何が言いたいのかというと,自分と違う地域に住んでいる面接官に対し,そこでの状況をイメージさせることは大変だということ.
防雪対策や塩害対策など,その地域に住んでいなければ理解できない現象や解決策は案外多い.試験官のレベルがどうのこうのではなく,机上の理論での理解と実体験を通じた理解では雲泥の差がある.その地域に住んでいないと理解できないような技術的体験論文を提出されている方は,受け答えの回答レベルを二段階で準備しておくのが無難だと思う.
試験官が同じ地域に住んでいるかどうかは,面接中に交わされる話の節々からある程度理解できると思う.そうしたヒントをキャッチするアンテナを全開で張っておいてほしい.試験官が同郷もしくは同じ現象を経験している方と判断できれば,回答する技術レベルを上げればよいし,そうでない場合,素人に説明するような感覚で臨むほうが「会話のやり取り」は上手くいくはずだ.
それぐらい寒冷地の道路事情(計画や技術なども含めて)は余所と異なると肝に銘じておいたほうがよい.

あと,普段の業務で使っているローカル的な語句の呼び名も再確認しておきたい.その地域では,その呼び名であっても,全国共通なのかどうか,一般的な定義を書かれている書物(道路なら道路用語辞典など)で確認しておくべきです.
総監部門の場合は住んでいる地域によって特段の配慮はいらない.しかし,建設部門の場合,受験者の常識が実はローカルだけで通用することなのかもしれない,と今回の模擬面接では痛感した.北海道のような寒冷地に住んでいる方は,そこでの常識を試験官にどう伝えるか,これが重要なポイントだと思う.
口頭試験対策ばかりを書いているようだけど,こうした点は筆記試験での事例などオリジナリティの記述にも共通して言えることですよ.
そう言えば,金曜日は雪が降っていたんだけど,道民にとってこの程度の雪は雨らしいし,焼酎の甲・乙類という感覚も,芋・蕎麦・麦とは違った感覚だったし,寒さ対策は万全にして行ったけど,乾燥していて唇は荒れ放題になったし……などなど,いろいろと北海道との違いを体感させていただきました.
模擬面接に無償で協力していただいた4名の技術士には,本当に感謝しております.試験官役が入替り立替りで,一日に模擬面接を4回も受けた受験者の方はへとへとだったと思います.私も,楽しい夜を過ごしたおかげで?チェックアウト時間ぎりぎりの起床になりました(話がそれたか……).正直なところ,北海道は寒かったですが,皆さんの温かい気持ちに触れることができ感謝しております.
―今日のことわざ―
神様にも祝詞
当たり前だが,お金を払ってでも早く移動したいから高速道路を使うのであって,言い方を変えれば,お金を払って速度(移動時間)を買っているわけだ.そうした根本を無視して,混みやすい土日やお盆休みを狙って割引するなんて……ほんとは交通需要の平準化を目指すべきなのに…….
個人的には,土日の1000円や深夜のETC割引とかはやめて,すべて正規料金の半額でいいんじゃないかと思っている.無料や1000円だのハチャメチャな案じゃなく,現実的な着地点を見つけてほしいところ.もう少し現在の正規料金を安くして,走行距離に応じた課金をすべき,というのが大方の意見だと思うのだが.
道路科目を専門とする受験者はもちろんだが,それ以外の科目の方も,「高速道路」に対する自分の考えは明確に持っておいたほうがよいと思う.どこが政権を担うことになろうが,次のようなジレンマに対する回答(自分の考え)は準備しておきたい.高速道路4社は17日、お盆期間(6〜16日)の利用状況をまとめた。通行料を上限千円とする休日割引が土、日に加え、お盆期間の木、金曜日にも適用された影響で、全国の交通量は前年同期比で14%増加した。
地震の影響で静岡県の一部区間で通行止めとなった東名高速道路は前年同期比8%減、迂回路となった中央道は22%増だった。通行止めとなった11〜15日、東名は1日当たり約2万5千台減少した。このうち中央道に約1万8千台が流れたとみられる。
10キロ以上の渋滞は、昨年より195回多い498回。30キロ以上は前年比2倍以上で31回増の54回に達した。最も渋滞したのは13日午前4時すぎ、東北自動車道下り線の矢板北パーキングエリア(栃木)付近で69キロだった。
「共同通信 2009年8月17日」
ほかにもたくさんのジレンマがあると思うので,時間がある今のうちに考えておきましょう.
・土日に高速道路を渋滞させて,物流輸送の邪魔をしているのではないか?
・公共交通機関(JRやフェリー,飛行機)を衰退させることになるのではないか?
・公共交通機関を使っていた人までもが,クルマで移動するようになるのではないか?
・公共交通機関の利用に対する補助(たとえばJRの特急料金など)をすべきではないか?
・走行速度が上がったとしても,クルマの数が増えCO2排出量も増加するのではないか?
・モーダルシフトやインターモーダル,モーダルミックスなどの流れに逆行していないか?
・高度で迅速な判断が必要となる高速道路に,高齢ドライバーを誘導すべきなのか?
・IC付近の整備(一般道への接続)が追いついていないのではないか?
・維持管理費や債務返済の財源をどうするのか?料金所やそこで働く人の処遇は?
……などなど
―今日のことわざ―
出船によい風は入り船に悪い
ちなみに,民主党が圧倒的有利だからと言っても,技術士試験で記述する内容は,現在の国交省(与党)が考えた施策を踏襲しておくべきです.民主党に政権が変わるとしても,それは筆記試験終了後のことですから,口頭試験(面接)のときに対策を考えれば十分です.
筆記試験の段階で右往左往する必要はありません.
民主党が考えている無料化の基本的な目的や効果は,民主党高速道路政策大綱〜高速道路の無料化〜に書かれているので,ちょっとコメントをつけてみよう.民主党は16日、衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げる高速道路の無料化について、首都高速や阪神高速など交通渋滞が激しくなる路線を除き、政権に就けば来年度から実施する方針を固めた。利用量の少ない地方から始め、需要の状況を見極めながら対象を広げていく。
原案では「一部の着手」にとどめる方向だったが、完全実施を求める議員らが巻き返した結果、「原則完全実施」で決着した。ガソリン税などの暫定税率の即時撤廃とともに、特に地方の自動車ユーザーの期待が大きい政策を重視する姿勢を打ち出す。
……以下,省略……
asahi.com:首都高・阪神除き高速無料化 民主公約、来年度から実施
「asahi.com 2009年7月17日」
(1)生活コスト・企業活動コストの引き下げ
これは単純なメリットと捉えがちだが,本来必要なコストを下げるんだから,どこかにしわ寄せが及ぶことになる.それを一般財源で賄ったら,クルマに乗らない人が損する不公平になるのでは…….
(2)地域活性化
地価の安い地域への企業進出などを期待されているようだが,いつまで三大都市圏からの企業誘致に振回されるんだろうか?不況と同時に工場撤退されて地域経済がズタズタになる,という今回の手厳しい教訓が活かされていないのでは?
地域産品の需要地への進出拡大,観光産業の活性化にしても,三大都市圏からお金を引張ってくる構図のままだから,そこが経済的なダメージを受けると,地方は倍返しの洗礼を受けてしまう.保護主義になるかもしれないが,地域内でヒト・モノ・カネを循環させる経済(たとえば地域通貨)を本気で考えていかないと,これだけ疲弊した地方の活性は望めない.
(3)温暖化対策
「一般道から高速道へ交通が移行すれば渋滞解消・緩和,CO2も減る」という論理は一見もっともらしいが,環境負荷の少ない公共交通の経営や交通弱者の立場をどうするつもりだろうか?「マイカーから公共交通へ」という流れに真っ向から反対しているのでは?
(4)「ムダづかい」の根絶
既存の高速道路を有効活用してバイパス道路建設を抑制するらしいが,何もバイパスは並行路線ばかりではないし,高速道路とバイパスを一緒くたにするのはいかがなものかと.
コメントと言いながら,思いっきり難癖をつけた格好になってしまった……が,現在道路が抱えている課題は,高速道路を無料にすればかなり改善されることは間違いない.一般国民受けする施策を打ち出そうとするのは理解できるんだけど,民主党には,メリットばかりを列挙するのではなく,負の側面に対する具体策も提示してほしい.
受験者の皆さんは,今回の記事も「試験勉強の息抜き」と考えていただいて,明日からの三連休,最後の追い込みをかけてください.
―今日のことわざ―
背水の陣
昨年は交通安全絡みで自転車や信号交差点が出題されたから,いよいよ今年は高齢者かも?
話は総監部門に変わるけど,とうとう新型インフルエンザの第一波がやってきました.これだけ連日ニュースに取上げられているので,総監部門を受験される方は,ザッとでいいからBCP(事業継続計画)に目を通しておいたほうがよいと思います.政府は19日午前の閣議で、2009年度版「交通安全白書」を決定した。08年に起きた交通事故による死傷者数は前年比8.6%減の95万659 人で、10年ぶりに100万人を下回った。うち死者数は前年比10.3%減の5155人となり、8年連続の減少。過去最悪だった1970年(1万6765 人)の約3割の水準まで減った。
死者数が減った理由について白書は、後部座席のシートベルト着用を義務化した改正道路交通法の施行(08年6月)などを背景に、シートベルト着用率が向上したことや、車両の安全性が改善した点を挙げた。
交通事故死を年齢別で見ると、65歳以上の高齢者が2499人と16年連続で最も多く、全体の48.5%を占めた。
「NIKKEI NET 2009年5月19日」
感染者が増えれば増えるほど,どこかの時点でインフルエンザが変異するリスクは高まるのに,「弱毒性でタミフルも効くから」と気軽に考えている人が多すぎるような……5月はやたらと総会みたいな「不要不急の会合」も多いし……これは愚痴か.
まー,第一波は梅雨入りで自然消滅するのを待つことになるんだろうなぁ〜.やはり問題は,秋口からの発生が懸念される第二波になるんでしょうね.
―今日のことわざ―
転ばぬ先の杖
引用した記事に書かれているような工法の見直し,いわゆる費用の削減が問題ではない.「交通量」から算出する「走行時間短縮便益」ですべてが決まってしまう便益評価をどうするのか,これが問題視されているのに本質が擦替っている.要するに,交通量が少ない路線の便益をどうやって評価していくか,こっちに議論が進まなきゃいけない.
まー,実際の議論がどうなるかは,「事業評価監視委員会」の議事を見てみないと何とも言えないんだが.
金子一義国土交通相は8日の記者会見で、道路整備の効果が費用を下回ったとして一時凍結した直轄国道18路線について、6月にも各地方整備局などで「事業評価監視委員会」を開き、事業の再開を検討する考えを明らかにした。
18路線は、下方修正した将来の交通量予測に基づき、費用対効果分析を行った結果として、3月に国交省が一時凍結を発表した。委員会は外部の有識者らで構成。工法の見直しで費用の縮減ができないかなどを検討する。
金子国交相は、18路線のうちすでに完成間近まで進んでいる事業について再開の可能性を示唆。ただ「(再評価で)効果が上回るなど委員会が必要だと判断しなければできない」と述べ、全路線の凍結解除は否定した。
「共同通信 2009年5月8日」

そろそろ今年の総花的な白書に目を通された受験者も多いと思います.
暮らしの根幹を支え,暮らしの質を高めるという白書のテーマは,今の世論では当たり前のことかもしれない.それとなく白書もへりくだっていたが,「行政は悪者」というバッシングが先行し,「住民は善良」という構図で捉えることは危険な単純化だと思う.公益ではなく私益を追求する住民エゴによって,事業が頓挫したり工期が遅れた苦い経験は,誰もが持っているのではないだろうか.
「住民参加」や「官民協働」は,住民(民間)も公益・公共性の責務を担っている,これが大前提である.しかし,その前提が置去りにされているような気がする.行政バッシングをすれば,それで問題が片付くのではない.住民はバッシングするに足るだけの,公益・公共性の責務を担えているだろうか.それ抜きで様々なニーズを発しても,住民エゴにしかならない(自戒の念も込めて……).
建設一般や専門科目の課題解決策として,耳触りのよい「官民協働」や「住民参加」というキーワードを散りばめるだけなら簡単だが,本質はそこではない.
公益・公共性の話をはじめると長くなってしまうので,またの機会にでも.
―今日のことわざ―
足るを知る