何回でも論文添削!技術士(建設部門・総合技術監理部門)受験 2011年04月
防災基本計画
 昨年同様,平成22年度国土交通白書『国土交通白書2011』はいつ公表されるかわからない状態……とは言え,誰もが大本命だと予想している東日本大震災関連の勉強は進めておいたほうがよいと思う.ちなみに,引用記事に書かれている「防災基本計画の見直し」の結果は今年度の技術士試験日には間に合いません.つまり,自らが情報収集して,自分なりの考えを取りまとめる必要があるということ.

 東日本大震災は,防災基本計画(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策)の想定を大幅に超える被害となった.想定では,M8.6の明治三陸タイプ地震が起きた場合(最悪の場合)の死者を2700人と予想していたが,今回の大震災は約10倍の甚大な被害だった.
 これまで実施してきた対策の妥当性が問われる「想定外」の事態だが,発生確率がきわめて高いとされる“東海・東南海・南海”の三地震連動など,今後の防災計画で「想定外」という言い訳は聞きたくない.

 政府の中央防災会議は27日、今回の東日本大震災を教訓として地震、津波対策を抜本的に見直すための専門調査会を新たに設置した。震災の激震と大津波を想定できず、甚大な被害が出たことを反省し、通常、2年程度かかる調査を大幅に繰り上げ、今年秋ごろに結論をまとめ、国の防災基本計画の見直しなどに反映させる。
 会議後の記者会見で松本龍防災担当相は「津波対策については学識経験者らが明治三陸地震(1896年)の被害状況などを基に積み上げたものが大きい」と説明。「中央防災会議や防災基本計画は(今回の)津波の高さなどを想定できていなかった」と、これまでの見通しが甘かったとの認識を示した。

 設置したのは学識経験者らによる「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」。5月中に初会合を開き、月1~2回開催。これまでの専門調査会は2年程度の時間をかけていたが、約半年で結論をまとめる。
 調査会では、今回の地震と津波の発生メカニズムや被害を分析し、地震規模の推定や被害想定の手法を見直す。その上で今後の地震、津波対策や、想定を超える災害に備えるための方向性を示す。政府は結論を受けて防災基本計画を見直し、津波対策の充実を図るほか、東海、東南海、南海の3地震が連動した場合など海溝型大規模地震の対策を検討する際にも反映する方針。……以下,省略……
 「日本経済新聞 2011年4月28日」

 防災計画の見直しだけじゃなく,復興のグランドデザインを描くことも急務である.岩手,宮城,福島3県に限らず,国民総意(これが難しいんだが)による構想のもとで,ハード施策とソフト施策を防災対策の両輪として回す必要がある.
 三陸縦貫自動車道のような津波防災を兼ねた高規格道路整備,空港における滑走路を対象とした液状化対策,津波からの避難施設を備えた港湾整備など,ハード施策として実施すべきことは多々ある.公共事業が生み出す付加価値は投資額の約1.1倍だが,需要不足や地域雇用が深刻化する被災地では,その波及効果は推定以上に大きくなるんだから,被災地の復旧には巨額の公共投資をしてほしい.

 今回の大震災でソフト施策の重要性が再認識されているが,津波ハザードマップは,浸水区域を予測する前提条件がすべての自治体で統一されているわけではない.
 また,今回の津波のように,想定していた高さと実際の高さが異なるとき,事前に作成した津波ハザードマップでは,浸水危険区域が絵に描いた餅になる可能性もある.地震が発生した際,予想される津波高さに応じた浸水危険区域が瞬時に一斉表示され,その情報が遅延なく住民に伝わる基盤整備(これまた難しいんだが)も必要だと思う.

参考ホームページ:内閣府(防災基本計画)
参考ホームページ:内閣府(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策)

―受講者さんへの確認事項―
 現時点で,建設部門は,想定問題18問(専門その13・建設一般その5:両方最終問題)までを配布済みです.総監部門は,想定問題その10(最終問題)までを配布済みです.
 もし手元に届いていないようでしたら,メールで連絡してください.セキュリティソフトによっては,送付したメールが弾かれたかもしれないので.

建設一般 | 【2011-04-28(Thu) 12:34:05】
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原子力安全の論理
 昨日,福島第1原発から半径20km圏内(域内の人口は約7万8千人:約2万7千世帯)が「警戒区域」に設定された.軽々しくは言えないが,ずいぶん前に読んだ「改訂 原子力安全の論理」に書かれている“個人的リスクと社会的リスク”を再考するきっかけになった. 
 元原子力安全委員会委員長が書かれたものなので,その点を差し引いて読む必要があるけど,技術者の考え方としては王道というか,これしかないのが現実だと思う.

 この本には,安全目標,多重防護やリスクの概念,ヒューマンファクター理論,システマティック・フェーリュア,設計基準事象(DBE),シビアアクシデント,アクシデント・マネージメント,確率論的安全評価(PSA)……などが述べられている.
 今年度総監部門を受験される方は,原発事故に対する自分の考え方を,推進か反対かという感情論ではなく,工学的かつ技術者の観点から一度整理しておいたほうがよいと思う.
 少し長くなるが,「改訂 原子力安全の論理 p.68」から引用してみる.

 個人的リスクが低いということは,安全性の必要条件ではあるが,国家的,社会的見地からは,それだけでなく,そのリスクに曝されている人の数が余りに多過ぎない,言い換えるとリスクの総量がある限度以下である,ということも大変重要なことである.
 それでは,個人的リスクと社会的リスクは,それぞれどのような関係にあるのだろうか.一つの例を示そう.

<例:東京都心の原子力発電所>
 日本では,原子力発電所は,比較的人口の少ないところに設置されるが,これをそっくり,敷地ごと,東京都の真ん中へ持ってきたと考えよう.
 原子力発電所の広大な敷地を都心に確保するなど,そもそも現実的でないが,ここではそれは考えないことにしよう.東京というところは,地質,地盤,水理などの条件が余り良くないので,原発立地には好適と言い難いが,ここではそれにも目をつぶって,他の原子力発電所の条件と同じ程度と考えよう.地震,気象,その他の条件も,ほぼ同様だとしよう.
 このように仮定すれば,原子力発電所による個人的リスクは,東京都心であれ,過疎地であれ,ほぼ同じである.もし私たちが,個人的リスクだけで判断するとすると,東京都心に原子力発電所を設置して悪い理由はない.
 だが,社会的リスクに注目すると,答えは違ってくる.発電所周辺の,ごく狭いところに,数百万人もの人がひしめく東京などの大都会では,もし個人的リスクが同じであれば,社会的リスクは極めて大きいものになる.「塵も積もれば山となる」ということわざの通りである.

 社会的リスクという概念は,時々非常に誤って受け取られることがある.原子力発電所の周辺に住む人々が,「我々は人数が少ないから,犠牲になってもやむを得ないということか」という疑問を抱くことがあるとすると,これがその誤解の例である.
 公衆の一人一人がどこまで保護されるべきかというのは,個人的リスクの問題であって,これはそのリスクに曝される人数とは無関係に,その個人によって受け入れることができる程度以下に低くなければならない.
 先の例にあるように,東京都心だろうと過疎地だろうと,そこに住んでいる「あなた」が保護される度合いに相違があって良いはずはないのである.社会的リスクというのは,その上にたって,社会全体あるいは国民全体にどれだけのリスクがあるかを考えるのであって,少人数の公衆は犠牲になっても良いなどということでは毛頭ない.

 個人的な感情だけで考えると,原発なんて日本から無くすべき,となってしまう.しかし,技術の進歩は先人の尊い犠牲を経て成立しているわけで,もし先人が一度失敗したものを全部放棄していたら,自動車や飛行機など現在の技術は確立されていないことになる.
 国家的,社会的見地から考えると,いつの日かやってくる石油資源の枯渇に対して,現時点で原子力の進歩を止めてしまうのは,後世に対して無責任な行為になるのではないか?もちろん,太陽・風力・バイオマスなど新エネルギー源の技術開発も欠かせないが,原子力エネルギーを放棄するのは時期尚早のような気がする.

 「改訂 原子力安全の論理」に書かれていた“How safe is safe enough? ”どれだけ安全なら十分安全か?という質問は,なにも原子力だけに向けられたものではなく,建設技術者にも同じ問いかけがなされていると思う.
 栃木県鹿沼市でクレーン車が突っ込み,登校中の小学生が死亡した事故も,「縁石がある安全な歩道」上の出来事だ.クレーン車は縁石の切れ目から歩道に進入したらしいが,どれだけ安全なら十分安全になるのだろうか.

日刊工業新聞社「改訂 原子力安全の論理」の紹介サイト
Amazon:改訂 原子力安全の論理 佐藤一男 (著)

―受講者さんへの確認事項―
 現時点で,建設部門は,想定問題17問(専門その12・建設一般その5まで)を配布済みです.総監部門は,想定問題その10(最終問題)までを配布済みです.
 もし手元に届いていないようでしたら,メールで連絡してください.セキュリティソフトによっては,送付したメールが弾かれたかもしれないので.

総合技術監理 | 【2011-04-22(Fri) 17:39:38】
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被災地からのメール(その4)
 被災地からのメール(その3)の続編になります(今回は私が下線を引きました).自らの職務によって,各々が参考にすべき点は多々あると思います.

 いきなり余談になりますが,合格された受講者さんが集う「懇親会」は予定通り開催することにしました.やっと幹事と連絡が取れました(今回の震災で幹事も大変のようです).
 過剰な自粛行為は景気に悪影響を及ぼし,結果的に復興の妨げになると思うので,「励ます会」を兼ねて例年通り開催するのがよいかなと.懇親会が景気に与える影響なんて知れているけど……まずは前向きな気持ちが大事ということで.
 ずいぶんお待たせしましたが,「懇親会」の案内メールは今週中に送る予定です(皆さんの参加をお待ちしております).

 大震災から1ヶ月が経過しましたが,7日も大きな余震が発生し(本震に劣らず強烈でした)ライフラインや各種施設が被災しております(JRは一部復旧しておりましたが余震で全部止まっています)
 時間が経過し,その後の被災地の状況やその他感じたことを報告いたします。

●沿岸部を除きJR,ガス(仙台市都市ガスは復旧率6割程度)を除きライフラインの復旧が進みガソリン・物資等の確保も容易になり日常生活に戻りつつあります。

●仙台など沿岸部を除く市街地は建造物の被害が意外に少ないため,津波被災地とのギャップが激しい。
 報道も沿岸部中心であるが津波から数百m外れた地域はほぼ普通の生活をしている(超広域的な沿岸部に特化した局地的大震災?)

●津波の被災地である多賀城(仙台港),塩釜の状況を確認しましたが,津波被災箇所はまさに爆撃を受けた戦場となっております。
 津波の浸水範囲,被災状況を確認すると,場所によって全く違い,同じ塩釜でも港湾や市街地は津波被害が発生しているが,漁港の津波被害は軽微で,松島も浸水したが被害は軽微
 また,仙台湾南部の海岸線は沿岸沿いに高規格幹線道路がが走っており,盛土であるため堤防機能となり被害が軽減されたものと思われます。

各種報道では,想定を超える津波のため既存のハード施設や各種の避難誘導などのソフト対策は役に立たなかったとの論調が多いようですが,場所によっては効果を発揮した施設やソフト対策もあり多くの人命を救ったものと考えられます。

●今回の震災(津波)における避難行動で有効であったのは,沿岸部の地域でほぼ整備されている防災行政無線による災害情報の速やかな発信と携帯端末(ワンセグ放送)からの情報入手であると思われます。
 地震直後に停電となりテレビからの情報入手が不能であった(当方職場では地震で停電となり,すぐに自家発に切り替えとなりましたが,テレビがぶっ飛んで破壊し大津波警報の情報入手が遅れた)特に防災行政無線は自ら行動を起こさなくてもサイレン,スピーカーにより情報入手が可能。

●今後の津波対策を検討するため,今回の大津波にける詳細な津波影響範囲,被害の把握と既存施設の有効性(津波・海岸施設以外も含む),住民避難行動の検証が必要であると感じました。
 沿岸部の低平地(農地等)では1m以上も沈下し,ほぼ海となっている地域もあり今後の復旧・復興や土地利用で大きな課題になると思われます。
 地震のみで見れば,各種公共施設などこれまでの耐震化や補強などの取り組みにより被害や影響は最小限であったのではと思われます(震度6強以上の地震が2回発生しているが津波以外のエリアでは人的被害が非常に小さい

●今回の震災では全国各地からの支援物資を初め各種復旧支援,ボランティア義援金など非常にありがたく感じております。特に関西方面からの人的支援が活発で,当県の災害復旧でも兵庫県が主体となり今後全国から応援がなされる予定です。
 今後は,被災地の復興に欠かせない産業・生活基盤の災害復旧が本格的に始まることとなりますが,微力ながら取り組んで行くところです。



日々寸感 | 【2011-04-11(Mon) 12:27:27】
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建設部門 択一問題集  平成29年度版
総監部門 択一問題集  平成29年度版
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