何回でも論文添削!技術士(建設部門・総合技術監理部門)受験 2011年05月
列島強靭化論
 大穴とは言え,今年度の建設一般は「復興構想」が出題されるかもしれない.
 技術士としての資質を試すのなら,模範解答が示されていない「復興構想」のような出題が望ましいと思う.答えが決まりきった従来の試験問題では,A評価とB評価の振り分けがどうしても恣意的判断になってしまうし,ここ数年特にその傾向が強いように感じる.

 昨日『列島強靭化論』を読んだ.前著『公共事業が日本を救う』も熱かったのだが,今回も吠えている……土木(交通)計画から社会心理学,経済政策や社会思想?へと話が大きくなるのはいいんだが,それに準じて自分の思いが先行しすぎている感も否めない.
 とりあえず序章の熱い思いを引用しておく.復興に対する考え方はいろいろあるので,一読しておけばいいんじゃないかな?

 被災された一人ひとりの生活と生業を再建することが復興の基本,と著者が主張する「ふるさと再生」のビジョンは理解できる.だけど,コンパクトシティやスマートシティ,エコタウンを机上の空論としてぶった斬るのは,さすがにリップサービスが過ぎるような…….
 どうのこうの言っても,技術士試験の場合は,復興会議が提唱する国策(机上の空論?)に付かず離れずの姿勢でまとめるのが無難だと思う.

 激甚な被害を東日本は受けた、そしてそれを通して、「国難」とさえいいうる被害を、我が国は受けてしまった。しかし、ここで、うろたえずに、冷静に判断をし、適切な対策を間違えずに行うことができれば、東日本も日本経済も「5年」でその基本的な復活を果たすことができる。
 しかも、これからさらに「連発」しかねない「巨大地震」をはじめとする数々の国難的危機をも乗り越えうる「強靭」(resilient)な国家、すなわち、どのような危機に対しても「しなやか」に堪え忍び、永きにわたって繁栄し続けることができるような国家を、「10年」をかけてつくり上げることができるに違いない――本書『列島強靭化論』は、そんな筆者の確信を、「広く日本国民に問う」ことを目的として、改めて書き起こしたものである。
 『列島強靭化論』p.13

 悪意的に言うわけじゃないんだけど,あえて厳しい見方をすれば,今回の壊滅的な被災がなかったとしても,現状の生活を長期的に継続するのは難しかったのではないか?たとえ「ふるさと再生」しても,いつまでその形態を保てるか,という点に疑問が残る.
 これは何も被災地に限った話ではない.人口減少や高齢化に加え,公共交通機関の縮小,都市との所得・雇用格差,第一次産業を中心とした地域産業の停滞,耕作放棄地の拡大,限界集落の増加,蔓延的な医師不足……など,地方の問題を挙げれば切がない.

 こうした問題を,コンパクトシティやスマートシティ,サスティナブル(持続可能)なエコタウンがすべて解決してくれるわけじゃない.しかし,地方の閉塞感を吹き飛ばすためには,数十年後も栄えているような地域づくり,その先駆けとなるような最先端モデル都市への復興を目指すべきだと思う.
 何十年か後に住むであろう子孫は,どのような復興が望ましいか,現在選択することができない.彼らが大人になったとき「先人は正しかった」と納得できるような選択を,今を生きる大人にできるか否か,これに本当の意味での復興の成否がかかっている.

Amazon:列島強靭化論―日本復活5カ年計画 藤井聡(著)
Amazon:公共事業が日本を救う 藤井聡(著)
参考ホームページ:京都大学 都市社会工学専攻 藤井研究室

―今日のことわざ―
千里の道も一歩から


建設一般 | 【2011-05-25(Wed) 12:25:43】
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復興構想7原則
 東日本大震災復興構想会議が,6月末の第一次提言に向けた「復興構想7原則」をまとめています.これを転載するだけでは能が無いので,ちょっとコメントしてみます.太字表記部は,建設部門の論文を書くとき,復興の方向性として頭に入れておくとよいと思います.

原則1:失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私たち生き残った者にとって復興の起点である。この観点から、鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する。

 防災公園として森やモニュメントを残すつもりだろうか?単なるハコモノにならなければよいが……会議のメンバーを見て少し不安になった.追悼と鎮魂を軽視するわけではないが,衰弱死や悲観による自殺から,助かった命を守ることが復興の起点のような気がする.
 ハード面での科学的分析は時間経過とともに進むが,避難行動などソフト面の教訓をどこまで具現化できるか,が今後の鍵になると思う.大船渡市立越喜来小学校や岩泉町立小本小学校のような事例が大きく報道されてもよいのに.

原則2:被災地の広域性・多様性を踏まえつつ、地域・コミュニティ主体の復興を基本とする。国は、復興の全体方針と制度設計によってそれを支える。

 技術士の論文でも多用されるコミュニティは,上辺だけの常套句になっている.主体となる「地域・コミュニティ」として,どのようなコミュニティを,どのように形成・維持していくのか,高齢化が進む地域は真剣に考えていく必要がある.
 今回の震災では,生活再建など個別のナイーブな問題も話し合わなきゃいけない.それができるコミュニケーションの場をきちんと設定できるか?どうのこうの言っても,コミュニティの意見を集約できるかが最大の問題だ.

原則3:被災した東北の再生のため、潜在力を活かし、技術革新を伴う復旧・復興を目指す。この地に、来たるべき時代をリードする経済社会の可能性を追求する。

 東北の潜在力は何かという点が曖昧だが,第一次産業も盛んなわけだし,短絡的に第二次・第三次産業の技術革新とはいかないと思う.来たるべき時代をリードするためには何が必要なのか,それが簡単に見つかるのなら誰も苦労はしない.
 技術革新が起きるまでグローバル経済は悠長に待ってくれない.重要部品の生産拠点の復旧が遅れれば,部品生産を海外企業に代替されてしまう.現実的な対応を考えると,まず既存の生産拠点を復旧させて,落着いてから技術革新という流れになるわけだが,いったん落着いた後で革新なんて起きるだろうか?

原則4:地域社会の強い絆を守りつつ、災害に強い安全・安心のまち、自然エネルギー活用型地域の建設を進める。

 当たり前の話だが,想定外力が一定規模を超える(確率的に頻度の低い)災害への備えは,ソフトとハードの組合せしかない.大震災前から疲弊していた地方で,地域社会の強い絆が存在したのか,こうした絆づくりは当該地に限らず考えなきゃいけない点だと思う.
 自然エネルギー活用型地域という語句は,現在の国民感情と共鳴するかもしれないが,その具体的なイメージがつかめない.太陽光や風力,地熱では実現性に乏しい.将来の方向性としては正しいと思うが,実用に耐えうるまでの“つなぎのエネルギー源”が必要では?

原則5:被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す

 人口減少に伴う低成長,デフレや資金需要不足,社会保障費の増加など,これまで日本経済が放置してきた問題を,今回の被災と味噌糞一緒には解決できない.そんなトリッキーな施策が打てるのなら,とっくの昔に日本経済は再生している.
 天災がもたらす(人命から私的財産に至るまでの)長期的なリスクを低減しながら,同時に持続的発展を実現していく必要がある.選択と集中によるインフラ整備も大切だが,やるべきことが山積しているんだから,激減させた公共事業の総量を見直す時期に来ていると思う.

原則6:原発事故の早期収束を求めつつ、原発被災地への支援と復興にはより一層のきめ細やかな配慮をつくす。

 原発被災地への支援と復興は,先例が無いだけに“いばらの道”になるのは確実だ.どこまでを風評被害として補償するか,なんて一筋縄では決められない.さすがに,全ての輸出工業製品や海外の日本食材店・日本食レストランまでは補償できないような…….とにかく,建設部門の試験では,原発事故について踏み込んだ記述をする必要はないと思います.

原則7:今を生きる私たち全てがこの大災害を自らのことと受け止め、国民全体の連帯と分かち合いによって復興を推進するものとする。

  技術士試験を受ける人で今回の震災を他人事と考えている人はいないはず.“国民全体の連帯と分かち合い”という文面は,増税の前触れのような気がしないでもない.

参考ホームページ:東日本大震災復興構想会議
PDF:復興構想7原則(平成23年5月10日 東日本大震災復興構想会議決定)

―受講者さんへの事務連絡―
 私用で5月14日(土)から15日(日)は添削をお休みさせてください.5月13日(金)に送られたメールは,基本的に5月16日(月)以降の返信になります.ご無理を言いますが,よろしくお願いします.

建設一般 | 【2011-05-11(Wed) 20:02:03】
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