何回でも論文添削!技術士(建設部門・総合技術監理部門)受験 2011年08月
怨念を超えた政治的判断
 先日公表された平成22年度 国土交通白書では,限界集落の問題が先送りされている印象を受けた.今年度の建設一般で出題されたように,人口減少や少子高齢化の進展,厳しい財政状況など,日本の社会経済情勢は待ったなしの状況だ.
 その一方で,以下に引用した文面からは,今後も過疎化した集落を現存させていく姿勢がうかがえる.太平洋戦争の伸びきった物資補給網とインフラを一緒くたにはできないが,そろそろ限界集落から撤退する必要もあるのではないか.

 55歳以上の人口比が50%以上で,近い将来担い手の確保が難しくなるのが準限界集落,その次のステップ(65歳以上の人口比が50%以上)が限界集落,最終的に人口がゼロになるのが消滅集落だ.遅くても準限界集落の段階で手を打たないと限界集落化は避けられない,という考え方が一般的だが,国土形成計画が策定されてはいるものの,具体的なアクションには踏み込めていない.
 首相になった野田氏お得意の円高対策じゃないが,「医師不足や医療過疎を解消します」とか「雇用先を増やします」など,過疎地の選挙戦で繰返される呪文(口先介入)をいつまで念じ続けるつもりなんだろうか.
 限界集落の維持or廃止(撤退)論は,とかく都市(限界集落の維持コスト)と地方(森林・農地の荒廃,水資源などへの影響)の二元論になりがちだが,どちらも正論なんだから,それこそ“ノーサイドにしましょう,もう”というか,怨念を超えた政治的判断が必要なのでは?

(地方部に広がる集落の孤立のおそれ)
 東日本大震災では三陸沿岸地域を始め多くの集落が孤立し、救急救助活動が困難な状況が続いたが、全国で中山間地等の過疎化の進行に伴い、災害時に集落が孤立するリスクも高まっている。
 2009年に内閣府が行った調査によると、地震や津波等の災害時に孤立する可能性がある集落は、農業集落、漁業集落とも全国で約3割にものぼっており、5割を超える県も見られる。
 また、孤立する可能性のある集落における災害への備えについても、厳しい財政状況も反映し、避難施設の耐震性(避難施設が耐震性を有する農業集落は17%、漁業集落は22%)、水や食料等の備蓄(食料の備蓄のある農業集落は6%、漁業集落は12%)、情報通信手段の確保(何らかの手段を有する農業集落は45%、漁業集落は57%)等において、総じて不十分な状況にある。
 平常時からの避難施設の整備、生活必需品の備蓄や非常時における複数の情報通信手段の確保等の取組みはもとより、地域の生命線ともいえる生活道路等の適切な維持管理が求められる。
 「平成22年度 国土交通白書 p.80」から抜粋

 限界集落に限った話ではないが,全国の「買い物難民」は約600万人と言われており,その対策の一つとして移動販売が注目されているらしい.セブン-イレブンの「セブンあんしんお届け便」やイオン宅配サービス「とどくんです」など,地場のスーパーでも似たようなサービスが始まっている.しかし,移動販売の採算性や効率性,持続可能性を考えると,どうしても太平洋戦争の伸びきった兵站が頭にちらつく.
 乱立したコンビニの空き店舗を見れば,企業が永続的にサービスを続けるかどうか,に対する答えは明白だ.

 ローソンのスモールコンパクトシティによる限界集落支援も「新しい公共」の一環かもしれない(さすがにネーミングが強引な気もするけど……).行政の窓口業務や福祉施設,町のインフォメーション機能など生活に必要な機能を集約するらしいが,そもそも論として,すでに過疎化した現状を維持しようという試みだけでは先細りが見えている.
 「新しい公共」という概念は立派だが,なんでもかんでも企業に“おんぶにだっこ”ではいけない.準限界集落や限界集落を今後どうしていくのか,政治・行政が決めるべきことは山積している.

―平成24年(来年)度の受講者さんへ―
 建設部門(道路)の受講者さんには,先週26日付けで専門想定問題その1を配布しました.総監部門も同日に想定問題その1を配布済みです.もし手元に届いていないようでしたら,メールで連絡してください.セキュリティソフトによっては,送付したメールが弾かれているかもしれないので.

建設一般 | 【2011-08-30(Tue) 12:11:35】
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3Cによる社会インフラの再設計
 SUKIYAKI塾の掲示板で話題になっているようだが,建設一般Ⅱ-1の出題意図は何か?という質問が受講者さんから複数寄せられた.個人的には,平成23年度出題予想(建設一般)で示した「戦略的維持管理」に特化した設問ではないと考えている.維持管理の側面だけ記述するよりも,同記事に掲げた防災・減災,戦略的維持管理,成熟社会など,幅広い3つの視点でまとめたほうが評価は高いのではないか.
 何を書くにしても,設問の前文(社会資本の高齢化・人口減少や少子高齢化の進展・右肩上がりの投資を期待することは困難)と論理的につなげるのは当然だ.

 シンクタンクの提案を鵜呑みにするのは好きじゃないが,以下に概説した「3Cによる社会インフラの再設計」で課題を提起するのも,ひとつの考え方だと思う.口頭試験対策を兼ねて,野村総研の書籍(Amazon:社会インフラ 次なる転換)を一読する価値はある.

1.社会資本の減量化(Compact)
 集約化や高密度化,骨格路線(ネットワーク化)の取捨選択などを解決策に書けばよい.コンパクトシティは実現までに長い時間と莫大な費用を要するので,それらを見据えた即効策を記述したいところ.ちなみに,社会資本を画一的にダウンサイジングしていくわけじゃないんだから,選択と集中(既存ストックの評価)というキーワードもほしい.
 トコトン突き詰めれば,離島や中山間地域の既存ストックをどこまで残しておくのか,というシビルミニマムの難しい問題になるが,そこまで言及できれば大したものだと思う.

2.社会資本の機能転換(Convert)
 公共建築物の用途変更によるリノベーション,車線を減少させて歩道を増やすリニューアルなどを解決策にすれば,設問で問われている「今後の社会資本整備」の整備面が強調できる.高盛土の道路に堤防の役割を与える考え方も,機能転換の一種の機能付加として記述できるのではないか.
 直近の日経コンストラクションで紹介されていた「犯罪多発した鉄道高架跡を公園に再生」もコンバージョンになる.この事例は工事費が高すぎるような気がしないでもないが…….

3.社会資本の横断管理(Cross over)
 従来の縦割りから分野横断的に維持管理(横割り)していきましょう,という話だから現実味に乏しいかもしれないが,すでに外国では導入されているし,設問の前文に即した考え方じゃないかな?
 分野横断管理(たとえば橋梁と堤防,道路と上下水道など)による効率化・コスト縮減を中心に据えて,LCCの最小化,予防保全,PPP/PFIなど,幅広い解決策を書けばよい.Ⅱ-1のような誰でも書ける設問でA評価を取ろうとすれば,他の受験者との差別化(オリジナリティ)も考えるべきだと思う. 

Amazon:社会インフラ 次なる転換 ―市場と雇用を創る、新たなる再設計とは 野村総合研究所(著)
参考ホームページ(主要目次):社会インフラ 次なる転換―市場と雇用を作る、新たなる再設計とは―

―今日のことわざ―
甲乙を付け難い


建設一般 | 【2011-08-20(Sat) 12:11:13】
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(事務連絡)論文添削について
―平成24年(来年)度の受講を考えられている皆さんへ―
 アナウンスを開始する前から申込みが届いている状況なので,本日8月7日から平成24年(来年)度受験に向けた論文添削の申込みを開始します.  
 今年度は東日本大震災や集中豪雨に伴う災害対策で十分な準備ができなかったので,来年度に向けて早めに勉強を開始したいと思っている方が多いようです.すでに,来年度初めて二次試験を受ける予定の方からも添削指導の申込みがきています.
 申込みについては,「建設部門(道路)の論文添削について」あるいは「総合技術監理部門(建設)の論文添削について」を読まれたうえで「申込みフォーム」からお願いします.

―平成23年(今年)度の受講者の皆さんへ―
 技術的体験論文に関する案内を,本日8月7日にメールしました.
 当たり前ですが,全員に送信するので,筆記試験がサッパリだったなぁ~と自覚している受講者さんにも届きます.毎年お伝えしていることですが,技術的体験論文を準備するか,今年はキッパリあきらめて来年に向けてボチボチ始動するか,このへんの判断は各自に任せたいと思います.

―お盆の予定について―
 これも毎年のことですが,8月13日から8月15日まで帰省するので,その間はメールへの返事や添削ができないと思います.ご迷惑をおかけしますが,よろしくお願いします.

日々寸感 | 【2011-08-07(Sun) 19:32:15】
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お疲れさまでした.
 昨日,今日と受験された皆さん,お疲れさまでした.
 
 ―総監―
 今年は過去問に忠実というか,比較的素直な出題でした.
 受講者の皆さんは,想定問題として用意した仮想事例とBCP,これらを組み合わせて(あるいは単独で)記述したのではないか,と考えております.対策案を行う理由と留意点は新たな傾向なので,想定問題の解答を丸写しするわけにはいかないけど,きちんと想定問題をこなしていれば,そう難しくはなかったと思います. 設問で要求された細かな点の見落としや,毎年のことながら択一の出来が気になるところです.
 出題内容と想定問題がこの程度似通っていれば正直十分だと思うし,さすがにドンピッシャリは不可能です.
 ざっとした感想は「サプライチェーン」に書いたので,目を通してみてください.

 ―建設一般―
 今後の社会資本整備と建設産業の活力,何でも書けるような設問でした.受講者さんは想定問題の解答を流用すれば書けたと思います.それにしても,こんな大風呂敷を広げて,どうやって(AB評価の)ボーダーライン上の受験者を振り分けするんだろうか?試験官の主観(当たりハズレ)次第になる予感……もっと客観的にAB評価を決めやすい出題にしたほうがよいと思うのだが.
 
 ―専門―
 必須は「費用便益分析・事業評価」だったので,想定問題として準備した防災,プライオリティ・スピーディー,将来交通需要・推計などを使えば,受講者さんは記述できたと思います.災害時における道路の役割と費用便益分析・事業評価の課題,これらが論理的につながっているかどうか,が勝負の分かれ目か?
 選択は,想定問題の「交通安全対策」や「盛土の性能設計」を書いた受講者さんが大半だと思います.ほぼ想定問題通りの内容だったと思うし,一字一句当てるのは無理です.CO2削減やユニバーサルデザインを書くことも可能だったと思いますが,これらは受験者の多くが選択しているでしょうから,相対評価は厳しくなるかもしれません.舗装工事における他産業再生資材は予想外でした.
 
 試験問題を提供してくれた受講者さん(今回はハンドルネーム表記を避けました),迅速な対応ありがとうございました.
 とりあえずビールでも飲んで,筆記試験の疲れを癒してください.

―今日のことわざ―
寝る間が極楽


出題予想 | 【2011-08-07(Sun) 19:14:57】
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サプライチェーン
 今日の試験を今日ブログ記事にしているので,じっくり考えたわけじゃないが,今年の記述式を振り返ってみたい.このブログを見ている方は,ケースⅡ(大規模構造物の建設)を選択した人が大半だと思うので,ケースⅡを選択したとして振り返ってみる.

 1枚目は,建設プロジェクトの定義については,事業モデルの内容として,どのような種類の構造物を,どのような目的で,どこに(海外or国内)いつまでに建設するのか,機能や規模なども織り交ぜて記述すればよい.
 必要とされる外部資源や外部環境については,建設プロジェクトの定義とは別項目として書いたほうが試験官は評価しやすいと思う.ちなみに,必要とされる外部資源として資金も書かれているので,民間プロジェクトなのか公共事業なのか,ぐらいは書いておいたほうがよい(書かなくても公共事業が明らかな構造物なら不要だが).
 前置き文章のなかに『当該プロジェクトを提案する立場で』と書かれているが,自分の職務と立場を細かく仮定したほうがよいと思う.

 2枚目から3枚目は,「建設中」に被る可能性のあるシナリオを3つ書かなきゃいけない.「社会的必要性は失われないものとする」と書かれているので,周辺住民の反対による建設中止のようなシナリオではダメということ.
 シナリオという語句に惑わされた方がいたかもしれないが,昨年の「事業等の前提となる主要な条件について生じる可能性のある重要な変化,その変化により顕在化する可能性のあるデメリット」と同義と考えてよい.つまり,過去問と同じ内容が出題されているということ.
 外部要因としては,電力使用の制約(計画停電),インフルエンザの流行なども考えられるが,素直に「例えば,自然災害……」と設問に書かれている内容を取上げてもよいと思う.くれぐれも,似たようなシナリオを書いて“どや顔”してはいけない.

 一番気をつけなきゃいけないのは,「あなたの所属する組織への直接的な被害は軽微又は無かったものとする」という点だ.つまり,自らの組織以外のサプライチェーンへの影響を意識してシナリオを組立てる必要があるということ(必要な資機材や人材は“外部調達”とケースⅡの表中に明記されている).現在のBCPは,サプライチェーンを意識しながら企業が協調して取組む必要性・有効性を強調しているので,その点に配慮した出題意図だと思う.
 設問では要求されていないが,シナリオを踏まえた課題を書いてもよい.もちろん,4枚目から5枚目の「事前に準備しておくべき対策案」で解決される課題を書く必要がある.

 4枚目から5枚目は,前置き文章のなかに書かれている『事前に想定領域を広げ,事態に直面した際に影響を緩和するような工夫』を意識して記述したいところ.
 2つのシナリオを何にするか次第だが,事前に準備しておくべき対策案は,フィージビリティ・スタディ,サプライチェーンマネジメント,リスクマネジメント,危機管理,BCP,情報システムのバックアップ・高信頼化などが書きやすいのではないか.
 こうした対策案を行う理由は難しくないだろう.留意点としてコストバランスに言及すれば,経済性管理と安全管理,経済性管理と情報管理など,分野間のトレードオフを考慮した実現性も示すことができる.もちろん,PDCAサイクルの考え方も留意点のひとつだ.
 
 ざっと振り返ってみたが,過去問対策を万全にしておけば,及第点レベルの論文を記述できる出題だったのではないか.

総合技術監理 | 【2011-08-06(Sat) 22:15:50】
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リンク
建設部門 択一問題集  平成29年度版
総監部門 択一問題集  平成29年度版
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