何回でも論文添削!技術士(建設部門・総合技術監理部門)受験 思想の違い
思想の違い
 今年の4月から6月まで,マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」がNHKで放送されていたんだけど,筆記試験前の切羽詰まったときに正義や道徳……さすがに無謀だと思い,当時ブログでは取上げなかった.
 ほんの少しだけ朝晩が過ごしやすくなったので,目先の業務やデジタルコンテンツに振回されている日常を離れ,じっくり自分の考えを整理する時間も確保したいところ.

 「トロッコ問題」や「フォード・ピント事件」など,技術士試験に直結する話じゃないが,示唆に富む内容が多い.公益確保が必要な理由やそれに反した事例への私見など,お決まりパターンの質疑応答を考える前に,正義や共通善という大局から俯瞰するのもよいかなと.
 リバタリアニズム(自由至上主義),リベラリズム(自由主義),コンサバティズム(保守主義),コミュニタリアニズム(共同体主義)など,自らが支持する思想によって抜粋した問題の答えは変わってくる.こうした何々主義を覚える必要はないが,自分はどの考え方『思想』に近いのか,は知っておくべきだと思う.

第1回 「殺人に正義はあるか」
Lecture1 犠牲になる命を選べるか

 あなたは時速100kmのスピードで走っている車を運転しているが、ブレーキが壊れていることに気付きました。前方には5人の人がいて、このまま直進すれば間違いなく5人とも亡くなります。横道にそれれば1人の労働者を巻き添えにするだけですむ。あなたならどうしますか?
 サンデル教授は、架空のシナリオをもとにしたこの質問で授業を始める。大半の学生は5人を救うために1人を殺すことを選ぶ。しかし、サンデル教授はさらに同様の難問を繰り出し、学生が自らの解答を弁護していくうちに、私たちの道徳的な根拠は、多くの場合矛盾しており、そして、何が正しくて、何が間違っているのかという問題は必ずしもはっきりと白黒つけられるものではないことを明らかにしていく。

第2回 「命に値段をつけられるのか」
Lecture3 ある企業のあやまち
 ベンサムの功利主義の中心となる考え方である「効用の最大化」、つまり最大の喜びをもたらすものこそ最善である、という論理をさらに具体的に考える。「すべての便益の合計から、代償を差し引いたとき、幸福が苦痛を上回るだろうか」というこの論理は、「費用便益分析」という名で、昔から企業や政府でよく使われてきた。
 サンデル教授は、事例をいくつか挙げる。政府がたばこの消費税率を上げようとした時、あるたばこ会社は費用便益分析を行い、「政府は、国民の喫煙によって得をする」という結論を出した。1970年代には、アメリカの自動車メーカーが、人の命に値段をつけて、リコール問題における費用便益分析を行った。多数派が残酷で、卑劣であっても、私たちは常に多数派の幸福をより重視すべきなのだろうか?すべての価値をお金のような共通の基準を用いて足し合わせ、比較することは可能なのだろうか?
 ―NHK「ハーバード白熱教室」全12回の講義一覧から抜粋―

 『思想』に関連付けて話をすると,技術的体験論文や質疑応答を考えるとき,試験官それぞれの思想(設計や計画に対する考え方)の違いも認識しておく必要がある.
 たとえば,A試験官とB試験官では常識としている思想が異なるかもしれないし,A・B両氏と受験者自身が常識としている思想の不一致も考えられる.こうした思想の違いが,面接会場で試験官と話が噛合わない原因になってしまう.
 前置きが長くなったが,自画自賛じゃなく,多面的に自分の体験論文を洗い直し,批判的な質疑応答を準備する必要があるということ.人間誰しも,知らず知らずのうちに,自分の思想が絶対的なものと過信してしまうんですよね……いろんな見方(思想)があることをサンデルから学べばよいと思う.

NHK「ハーバード白熱教室」番組公式サイト
 トップページ右側に講義一覧があり,それぞれ講義詳細(全12回のアウトライン)が書かれている.講義詳細の右側にディスカッションガイドもあるが,答えは簡単に出ないと思う. 
パンドラTV:ハーバード白熱教室 第1回「殺人に正義はあるか」
パンドラTV:ハーバード白熱教室 第2回「命に値段をつけられるのか」
 すでに「ハーバード白熱教室」の放送は終了しているので,パンドラTVの動画のリンクを張っておきます.こんな講義だったら真面目に受けていたんだろうなぁ?.
Amazon:これからの「正義」の話をしよう マイケル・サンデル (著), 鬼澤 忍 (翻訳)
Amazon:正義論(改訂版) ジョン・ロールズ (著), 川本隆史;福間聡;神島裕子 (翻訳)
 どうしても書籍だと堅苦しくなるので,まずはサンデルの講義を動画で観るのが無難かな.サンデルは,リベラリズムの大御所であるロールズを批判して有名になったので,絶版だった「正義論」の改訂版も挙げておきます.

―今日のことわざ―
得手に鼻つく


日々寸感 | 【2010-09-10(Fri) 20:41:44】
Trackback:(0) | Comments:(2)
コメント
ご無沙汰しております.

「これからの「正義」…」」は買ってみようかと考えているところでした.(装丁もなんとなくかっこいいですし.)らがーさんご推薦なら迷わず「買い」ですね.

「思想の違い」からVFMの「価値の最大化」についてちょっと連想してしまいました.
 
 納税者(受益者)に対するサービスの価値の最大化の定義ってなんだか難しいですよね(って勉強不足なのは私だけかな).それこそ大きな意味での「思想の違い」かななんて考えたりして.(鞆の浦の問題も関連しそうな気もしたりします.)

教科書的には「難しいなんて言わずに説明責任を果たすのが「公共」に携わる技術者の最低限求められる資質」なんでしょうけど,いちメーカーの技術職の私にはできそうにありません.

学生のころにもっと勉強しておくべきだったと反省する今日このごろです.
 
2010-09-11 土 00:10:37 | URL | Noah #hnp7Lnbs [ 編集]

Noahさん,こんにちは.

書籍だけで理解するのはしんどいので,合わせて「ハーバード白熱教室」の放送を観ればよいと思います.ニワトリが先か?卵が先か?の違いですが……どっちも目を通す価値があるということです.

VFMの「価値の最大化」という文言は立派なんですけど,その本質は難しいですよね(受益者すべてが善人じゃないですし……).
サンデルは“すべての価値をお金のような共通の基準を用いて足し合わせ,比較することは可能なのだろうか?”という費用便益分析の本質にも言及しているので,「公共」に携わる技術者だからこそ,観る価値があると思っています.

学生時代は皆似たような状況だったのではないでしょうか(笑).
2010-09-11 土 09:57:43 | URL | らがー #- [ 編集]
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