何回でも論文添削!技術士(建設部門・総合技術監理部門)受験 原子力安全の論理
原子力安全の論理
 昨日,福島第1原発から半径20km圏内(域内の人口は約7万8千人:約2万7千世帯)が「警戒区域」に設定された.軽々しくは言えないが,ずいぶん前に読んだ「改訂 原子力安全の論理」に書かれている“個人的リスクと社会的リスク”を再考するきっかけになった. 
 元原子力安全委員会委員長が書かれたものなので,その点を差し引いて読む必要があるけど,技術者の考え方としては王道というか,これしかないのが現実だと思う.

 この本には,安全目標,多重防護やリスクの概念,ヒューマンファクター理論,システマティック・フェーリュア,設計基準事象(DBE),シビアアクシデント,アクシデント・マネージメント,確率論的安全評価(PSA)……などが述べられている.
 今年度総監部門を受験される方は,原発事故に対する自分の考え方を,推進か反対かという感情論ではなく,工学的かつ技術者の観点から一度整理しておいたほうがよいと思う.
 少し長くなるが,「改訂 原子力安全の論理 p.68」から引用してみる.

 個人的リスクが低いということは,安全性の必要条件ではあるが,国家的,社会的見地からは,それだけでなく,そのリスクに曝されている人の数が余りに多過ぎない,言い換えるとリスクの総量がある限度以下である,ということも大変重要なことである.
 それでは,個人的リスクと社会的リスクは,それぞれどのような関係にあるのだろうか.一つの例を示そう.

<例:東京都心の原子力発電所>
 日本では,原子力発電所は,比較的人口の少ないところに設置されるが,これをそっくり,敷地ごと,東京都の真ん中へ持ってきたと考えよう.
 原子力発電所の広大な敷地を都心に確保するなど,そもそも現実的でないが,ここではそれは考えないことにしよう.東京というところは,地質,地盤,水理などの条件が余り良くないので,原発立地には好適と言い難いが,ここではそれにも目をつぶって,他の原子力発電所の条件と同じ程度と考えよう.地震,気象,その他の条件も,ほぼ同様だとしよう.
 このように仮定すれば,原子力発電所による個人的リスクは,東京都心であれ,過疎地であれ,ほぼ同じである.もし私たちが,個人的リスクだけで判断するとすると,東京都心に原子力発電所を設置して悪い理由はない.
 だが,社会的リスクに注目すると,答えは違ってくる.発電所周辺の,ごく狭いところに,数百万人もの人がひしめく東京などの大都会では,もし個人的リスクが同じであれば,社会的リスクは極めて大きいものになる.「塵も積もれば山となる」ということわざの通りである.

 社会的リスクという概念は,時々非常に誤って受け取られることがある.原子力発電所の周辺に住む人々が,「我々は人数が少ないから,犠牲になってもやむを得ないということか」という疑問を抱くことがあるとすると,これがその誤解の例である.
 公衆の一人一人がどこまで保護されるべきかというのは,個人的リスクの問題であって,これはそのリスクに曝される人数とは無関係に,その個人によって受け入れることができる程度以下に低くなければならない.
 先の例にあるように,東京都心だろうと過疎地だろうと,そこに住んでいる「あなた」が保護される度合いに相違があって良いはずはないのである.社会的リスクというのは,その上にたって,社会全体あるいは国民全体にどれだけのリスクがあるかを考えるのであって,少人数の公衆は犠牲になっても良いなどということでは毛頭ない.

 個人的な感情だけで考えると,原発なんて日本から無くすべき,となってしまう.しかし,技術の進歩は先人の尊い犠牲を経て成立しているわけで,もし先人が一度失敗したものを全部放棄していたら,自動車や飛行機など現在の技術は確立されていないことになる.
 国家的,社会的見地から考えると,いつの日かやってくる石油資源の枯渇に対して,現時点で原子力の進歩を止めてしまうのは,後世に対して無責任な行為になるのではないか?もちろん,太陽・風力・バイオマスなど新エネルギー源の技術開発も欠かせないが,原子力エネルギーを放棄するのは時期尚早のような気がする.

 「改訂 原子力安全の論理」に書かれていた“How safe is safe enough? ”どれだけ安全なら十分安全か?という質問は,なにも原子力だけに向けられたものではなく,建設技術者にも同じ問いかけがなされていると思う.
 栃木県鹿沼市でクレーン車が突っ込み,登校中の小学生が死亡した事故も,「縁石がある安全な歩道」上の出来事だ.クレーン車は縁石の切れ目から歩道に進入したらしいが,どれだけ安全なら十分安全になるのだろうか.

日刊工業新聞社「改訂 原子力安全の論理」の紹介サイト
Amazon:改訂 原子力安全の論理 佐藤一男 (著)

―受講者さんへの確認事項―
 現時点で,建設部門は,想定問題17問(専門その12・建設一般その5まで)を配布済みです.総監部門は,想定問題その10(最終問題)までを配布済みです.
 もし手元に届いていないようでしたら,メールで連絡してください.セキュリティソフトによっては,送付したメールが弾かれたかもしれないので.

総合技術監理 | 【2011-04-22(Fri) 17:39:38】
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